SEO TOOL
www.dirnupo.org

« 第2回ジャパン・ベテランズ・モトクロス | メイン | 2007年の盗難車両ワースト1位はハイエース »

2008年03月25日

■BAJA CHICKEN 第11羽 「万難を排する、ということ・後編」

img_oyaji.jpg前回までのあらすじ:BAJA500参戦を前に、品川近視クリニックで近視矯正手術(スーパーイントラレーシック)を受けることに決めた俺とセヌーさん。二人で手をつないで受けた(←嘘)手術前検診では、目を直接触られて泣きそうになったりもしたけど(←泣いた)なんとかクリア。あとはふたり手に手をとって来週の手術を待つだけだー! と覚悟も決まりきった俺にセヌーさんが言った言葉とは……。

X_Men_-_Logan.jpg

■セヌーさん、離脱

セヌー「ごめん。俺、もしかしたらダメかも」

手術前検診を一足先に終え、待合室で待っていた俺を見つけたセヌーさんは開口一番こう言い放った。そっかダメかぁ~じゃあ俺ひとりで……ってえええ江戸どどどどどゆことですか! なんでも、検査の結果、セヌーさんの角膜内細胞に長期コンタクト装着者に見られる細胞崩壊があり、細胞数が理想とする数値の1/5~1/2程度しかないことが分かったらしい(ちなみにセヌーさんは過去15年ほど前に2度ほどコンタクトに挑戦したものの、あわないと判断してやめた経緯がある。そのたった2回で細胞を減少させたんだとしたら、よっぽどコンタクトが目にあってなかったってことだ)。

そのため、手術後に高い確率で中度の遠視が出る可能性があるという。ちょw、それって老……「つまりどうなるかと言うと、遠くは見えるようになるんだが、日常生活で遠視用のメガネが必要になるらしい」……ちょw、遠視用wwwそれって老……(ドス!)おぅふ……そ、それじゃ困りますよね(←腹をおさえながら)。しかも無理して手術したとしても、現在のスペック右0.3(近視+弱乱視)&左0.4(近視ほぼなし+乱視)から目標値である右1.2&左1.0に確実にアップする保証はなく、最悪目標値の7割程度しか到達しないケースもある。つまり、視力が0.7ぐらいにしかアップしない上に老……遠視用メガネをほぼ確実に使用するハメになるってことだ。

その選択はあまりにリスキー過ぎる。検査だけでやめる分にはお金かからないんだし。結局、その場では決めなかったものの、後日「やめとく」メールがセヌーさんから届いた。セヌーさんだってBAJAに全人生をかけているわけじゃないし、俺もやめた方がいいと思った。しかし、これで俺はひとりぼっちになってしまったのだった。

■近視矯正しりつ当日(ピノコ風)

ほぼ一週間後の手術当日、病院へは16時半に行く予定だったので会社へはいつも通り出社した。社員食堂でメシを食っている時も「今こうして味噌汁をすすっている男が夕方には逆オプティックブラスト食らってるなんて誰も思わないだろうなー」なんてボーッと考えており、心ここにあらずといった状態だった。

16時20分。普段の俺からは考えられないくらいの正確さで有楽町に到着すると、あとはもう一直線に病院へ向かう。寄り道とかまったく考えられない状態。かといって心の準備ができてるわけでもない。受付を済ますとまたひとしきり目の検査をされる。「ま、また目ぇ触られんのかい!」と心の中で泣き叫んだが機械を覗き込むだけで終了。ホッ。その後、ようやく会計。つまり、この段階まではタダってことか。カードが使えたので3回払いにしてみた。貯金があってやってるわけじゃないので未来の自分に期待するしかない。

しばらく待合室でほうけていると俺を含めた5人ほどが集められた。俺もオッサンだが、他の4人は明らかに40~50代、やっぱ年齢は関係ないのね。若い女性スタッフから手術後に使用する目薬(何種類もある)の説明を受ける。また、この時に就寝時に使うプラスチック製の眼帯、さらに翌日検診まで外出時に着用する安っぽいアイシェードも渡された。手術は検査フロアの下、13階で行われる模様。「手術が始まったらもうこの階には戻ってこれません、忘れ物など大丈夫ですか?」というスタッフの問いに恐ろしいものを感じ、思わず「ヒャイ」と声が裏返った。

■イントラレースFS60レーザー室

荷物をロッカーにあずけ、オッサン5人衆は頭にビニール製の帽子みたいなのをかぶり、なぜか目をつぶらされて待合室に待機。そこへスタッフが来て、ひとりまたひとりと連れ出して行く。ほどなくして俺の番が来た。すぐとなりのリラクゼーションルームみたいなところで椅子に座らされて麻酔目薬を点眼される。すぐには効いてこないが、そのまま別部屋に移動。こうやって、徐々に準備するのだな~……などと悠長に構えていたら次の部屋がもう手術室だった。

intralase.jpgああ、心のズンビが……と抵抗する間もなくイントラレースFS60レーザーのベッド部分に寝かされる俺。周りにはスタッフが数名。頭の位置をベッドのくぼみみたいなところに入れてしばらく位置を微調整。「うーん……もうちょっともうちょっと……はいオッケー!」えええ、こんなんでいいの? もっとガッチリ固定されるのかと思ってた。俺が突然寝返りとか打ったらどうすんの! とかおびえているとさらに先生が麻酔目薬をガンガン点眼してくる。で、なんか輪っか状の開眼器なるものを目のとこにハメられる。痛くはないんだけど結構圧迫感があって怖い。目は開いてるはずなんだけど、もう何も見えてない状態。たぶん俺いま相当キモい状態になってるだろなー、と思ってると目の前に光が……。

「真ん中の光を見ていてくださいー」。あとは目の前にある光を見つめてるだけ。いや見ているってのは正確じゃないかも。どこが焦点かもわからずただ目を開けてるだけって感じ。「順調ですよ~」とか声をかけられるけど何も変化はない。すでにレーザーが俺の目にまーるい切り込みを入れているというのか。俺はただ視界の隅を小阪由佳がビキニ姿で通りがからないことだけを祈っていた。「はい、次右目ですね~」。まったく同じ作業をもう片方の目でも行う。結局、ここでのフラップ作成は数分のうちの終了。「ありがとうございました~」とお礼を言いつつベッドから起き上がり、すでに周囲がぼやけてる状態だったので女性スタッフに腕を抱えられて次の部屋へ移動。ちょっとだけいい匂いがした。

■エクサイマーレーザー照射! 1秒…2秒…

廊下に用意された椅子でしばらく目を閉じて休んだあと最後の部屋へと連れていかれた。もうぼんやりとしか見えないが、やはり大型の機械がありその周りに数名のスタッフがいる。いよいよだ。同じようにベッドに横になり頭位置調整。今度は開眼器ではなく何かテープのようなもので上下まぶたを固定(だったと思う)。さらに目のところだけ穴の開いた紙みたいなのを顔にかぶせられた。機械が顔の寸前に迫ってくると、未知との遭遇みたいに光が踊り、中心に緑の点が見えた。「緑の光を見ていてください~」。もう言われなくてもガン見。ビオレママが全裸で横を通り過ぎても視線を動かさない自信があった。次にL字状の棒で先ほど作られたであろうフラップがぴろりとめくられた(感触はない)。すると完全に世界がぼやけ、さらに部屋の明かりが落ちたのか暗闇の中に光が見えるだけとなった。そして…

「ジ……ジジジジジ……」

gonk.jpg

何かがショートするような音とともにたんぱく質の焼ける匂いが鼻をついた。「照射時間6秒!」。エヴァンゲリオンのオペレーターの人みたいな声が部屋に響いた。俺は「武器よさらば(大友克洋)」に出てくるプロテクタースーツを着た兵士が、無人歩行戦車ゴンクのレーザーを受けて蒸発するシーンを思い出していた(←またパワードスーツネタ)。「1秒…2秒…」……長い6秒間が終わり、俺は蒸発することなく生きていた。フラップが戻され、もう片方の目も同じようにレーザー照射を受ける。あっけなく手術は終わった。

■イカがハマチが……見える!

ベッドから起き上がっても俺はまだ涙目で、特に周りが良く見えるとは思わなかった。翌日検診までの簡単な説明を受けて、事前にもらったカッコ悪いアイシェードをつけてエレベーターに乗ってもまだ涙目状態。目の状態が変わったことに気が付いたのはビルを出た時だった。

「ん?」

main_img_kaitenzushi02.jpg

すっかり暗くなった有楽町の町並みがクッキリと鮮明に見えた。おお、これは……! メガネとは違い視界すべてが明瞭だった。解像度があがったような感じ。急にテンションがあがって飛び込んだ回転寿司では、奥の3コーナーから立ち上がってくるイカが乾いてるかどうかまで判別できた。こりゃすげええええ。興奮して好きなイカばっかり食う俺。しかし、この頃から両目に異変が起きていた。そう、麻酔が切れてしみて来たのだ。もうこうなると涙が止まらないばかりか、鼻水まで出始めた。しかも、手術後から翌日検診まで1時間おきに数種類の目薬点眼が義務づけられているので大変。ほとんど号泣状態で目薬をさしつつ町を歩く俺。

電車の中でもダーダー泣き続け、ほとんど手探り状態で自宅へ。説明によれば術後1~2時間が痛みのピーク、と書いてあったのでとにかく目薬を打ちながらひたすら耐える。が、まったくおさまらねぇw。痛み止めの目薬もしてみたんだけど、本当にもうどうしようもなく痛かった。人間、目が痛いだけでこんなに何もできなくなっちゃうのかと思った。まったく直りそうになかったので、プラスチック眼帯をテープで固定し(寝ている間にこすったりしないように)、しばらくすると泣き疲れた子供のように眠ってしまった。

■翌日検診

翌朝。起きてみると前夜までの目の痛みは嘘のように消えていた。ちょこちょこ目薬をささなきゃならないのが面倒くさいが、痛くなければ問題なし。普通に車で出社して、夕方には翌日検診のために有楽町へ向かった。またいくつかの検査を受け、視力を測定。ここではいくつだったのか分からず。でも普通に一番下から2段目くらいは見えた。たぶん1.5くらい? 最後に眼科医の先生に診察を受けると、左目だけ炎症がひどいと言われる。通常なら次は一週間後のはずだが3日後に来なさいとのお達し。追加の目薬と錠剤をもらって帰宅。

■さらに3日後、そして一週間後検診

翌週火曜日に検診に行くと、もうほとんど問題ないとのことだった。視力検査でも一番下の段まで見えて左右2.0! まだ目の充血はひどいけど目薬の回数もすっかり減っていた。そして、一週間後検診。視力検査では左右1.5だったけど、これは体調で変化するから気にしないでいいそうだ。次の検診は3カ月後。……なんだけど、どうやら雰囲気的には来ても来なくてもいいよ、って感じ。まぁ術後検診はすべて最初の料金に含まれてるから、問題なければ来てもらわなくて結構です、ってスタンスなんだろう。

globe3.jpgなお、術後、しばらくの間出やすいと言われている、車のライトや街灯を見た時に光の輪が現れるハロー(光輪症)現象や、光がギラギラとまぶしく見えるグレア(光輝)現象は俺の場合ほとんどなかった(これはレーザーで削った部分に光があたって起こる乱反射が原因だそうで、じょじょに切削部分が滑らかになることで解消されると聞いていたので特に心配はしてなかった)。念のため、元々使っていたメガネを度なしガラスにしてもらって装着しているので、ドライアイ対策もばっちり。もしかすると、このままメガネはつけておくかも。無いとなんか落ち着かないし(意味ねー)。ともあれ、これで俺の近視矯正手術は完了した。

■万難を排する、ということ

たかが海外レースのためにレーシック手術するなんて! と思われる方も多いだろう。安くなったとはいえ14万は正直かなり厳しい出費だった(真剣に身の回りのモノを売りに出そうかと検討中)。そして、コンタクトやメガネでBAJAに出ている人はたくさんいるし、レーシック手術をしなければ完走できないなんてことももちろん無い(今後セヌーさんのメガネ&ゴーグル話も登場する予定)。じゃあなんでわざわざ?

seriousmeeting.jpg

俺は口では「とりあえず出場できれば……」なんて言ってはいるが、なにげに真剣に完走を目指している。だから、数え切れない問題の中で、お金(限度があるけど)で解決できることに関しては借金してでも潰しておきたかった。コンタクトがなくたって走れるとは思うけど、転倒のリスクは絶対に高まる。想定できるトラブルを放置したまま出場→やっぱコンタクトダメだー→無しで走行→転倒→怪我→リタイヤってことになったら、たぶんものすごく後悔するし、現在五分粥生活で75kgまで体重を絞り込んできているセヌーさん(←マジで悲惨なことになってるw)にも申し訳が立たないし。

プロとアマチュア、走りのレベルは違ってもレースについて真剣に取り組み、準備する姿勢に変わりはない。そして、どんな遊びでもユルさを同居させつつ超真剣になることが本当に楽しいんだと思う。絶対の体制を作るなんてことは不可能だけど、自分たちの力で少しでもベストに近づけたい。エンセナダのスタート位置に立つ瞬間まで、残すところあと65日しかないのだから……。(つづく