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2008年06月20日

■BAJA CHICKEN 第25羽 「05/27 プリラン初日の悪夢(1)」

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前回はコチラ。待ちに待ったプリラン初日。俺はこの日に起きた出来事を、たぶんきっとずーっと忘れないだろうな。なお、この日は途中のフィルム装填をミスったようで肝心なところの写真がほとんどなかったりします。がくり。

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■Hotel Del Valleを出発

プリラン初日早朝。夢ばっかりで深く眠れた気はしなかったがバッチリと目が覚める。パンツにTシャツで表に出てみるとかなり肌寒い。さっそく、バックパックからMSRの真っ赤なISDEジャケットを取り出した。これは、渡米直前に寄ったスーパーボール編集部でデザイナー・コヤマックスさんから餞別として頂いたもの(新品未使用!)。現行モデルにはないISDEのプリントがまぶしい。モトクロスウエアを着た状態で袖を通してみるとサイズもばっちりで、少し大きく胸元を開ければリアット装着状態でも問題なかった。なにより暖かい。

ホテルの駐車場にはすでにCRF450X唐沢さんと、CRF450Xナカムラさん、プリラン用にXR400Rを借りたムラカミさんが準備万端の様子で待っている。WR450Fも調子はバッチリ。チェイスカーのTUNDRAに乗るセヌーさんとコッツを振り返って一度うなづいてから、みんなの後に付いてまだ車通りの少ないエンセナダの街へと走り出した。WR450Fに乗るのはこれが初めてだったが、舗装路の時点でもまったく違和感はなし。ハンドルの位置も含め、こりゃバイクはいいぞ~、と頬がゆるむ。途中、PEMEXに寄りWRの前後タイヤのビードを出し、3号線へ向かう。この時点ではまだレースマイル0~40のコースはプリランできないのでRM40のOJOS NEGROS(オーホスネグロス)までは舗装路を使う。

■新たな担当パート

ここまでで「おや?」と思った人のために説明しておこう。そう、前に書いた走行プランではスタートライダーは俺じゃなくセヌーさんだった。その後の話し合いの中で「やっぱホッパーにサミットやらせんのは不安だろ常考w」ってことになり、俺も内心その言葉を待っていた! とばかりにセヌーさんに山越えパートを押し付けたのだった。結果、走行プランは以下のように変更された。

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START → RM40  ホッパー   40mile
RM40 → RM160 セヌー   120mile
RM160 → RM206 ホッパー  46mile
RM206 → RM270 セヌー    64mile
RM270 → RM400 ホッパー   130mile
RM400 → FINISH セヌー   40mile
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ホッパーの走行距離       216mile
セヌーの走行距離        224mile

セヌーさんのRM40からRM160までの一気走りが気温の上昇を考えるとがツラそうだが、距離の公平さやリスクを考慮するとこれが一番という結論に落ち着いた。スタートやるのは楽しそうだけど最初の40マイルで終わっちゃったらどうしよう……というプレッシャーは相変わらずあったが、ここまで来たらやるしかない、という気持ちになっていた。

■RM40、オーホスネグロスでジョニ男と邂逅

3号線を走り出し、山越えのワインディングに差し掛かるあたりから現れる景色に圧倒される。岩、山、丘、荒野に空、そして地平線……いろいろスケールがデカすぎて言葉にできない。もっとも、どこをとっても日本では考えられないような景色ばかりなので、いちいち驚いているヒマもなく割とすぐに慣れてしまった。いちおう写真も撮ってはみたのだがF3に付いてる50mmの単焦点レンズでおさまるような風景じゃない。28mm持ってくるんだった。まぁどのみち伝わりはしないんだけどね。こんないい道ならロードバイクでツーリングしたって十分楽しいだろうな。

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峠を越えてしばらく走ると先頭をゆく唐沢さんのバイクが道路脇のダートへ入る。RM40、最初のライダー交替ポイント・オーホスネグロスへ到着したのだ。俺はセヌーさんと、そしてムラカミさんが石井サチョーと交替する。とそこへ日本人ライダーが近づいてきた。オフィスフォレストサポートで同じクラスにソロ参戦する九州男児・ジョニ男たちだった。日本では数度メールのやりとりをしていたので「やっと会えたねー」とガッチリ握手。「緊張であまり眠れませんでした……」とリアルに緊張気味のジョニ男、なんと22歳の時に免許を取ってまだ2年目というから驚く。そのかわりほぼ毎週末土の上でバイクに乗っているそうだ。やっぱバイクは経験年数じゃないなー、と思った。夜にマイクスで一緒になると分かっていたので「頑張ってね、また!」と送り出す。内心では「頑張らないといけないのは俺の方だな」と思いつつ。

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■RM80付近、国道・コースの交差ポイント

次のサポートポイントはRM80付近、コースと交差する国道3号線の(エンセナダから)キロメーター78。またまた国道沿いなのでサポート隊としては非常に分かりやすい。ひたすら真っ直ぐな道をビュンビュン走ってKm78に到着すると、ムラカミさんたちの乗る白ピックアップ号の右リヤタイヤにパンク発覚! こんなゴツいタイヤがどうして……。犯人はまんま石器時代の鏃(やじり)のような形をした小石でした。ムラカミさんとATV群馬の根岸さんがてきぱきと作業を進めてアッと言う間にタイヤ交換完了。俺は自分がやる時のためにしっかり作業手順を見てました(←手伝えよ)。その後は到着までにだいぶ時間があるだろうということで椅子を出してまったり。SORIANAで買ったBIMBOパン(メキシコで一番有名なパンメーカー)にマーマレードを塗りたくってコッツと遅めの朝メシを食べた。

それからどれくらい時間がたったか誰かの「来た!」という声で国道に目を向けると、前走者のあげる砂埃が避けるため間隔を大きく空けて走行してきたライダーたちがひとりまたひとりとやってくるところだった。通り過ぎそうな勢いで走ってきたセヌーさんを大きく手を振って止める。よっぽど楽しいんだろう、ヘルメットを取ると出てきた顔は緩みっぱなしだ。水分とガスを補給して、エアクリーナーをチェックしたらまたライダーを送り出す。ここではライダー交替はしない。単に本番に向けて主要交替ポイントの場所を知っておくためのストップなのだ。「おーい、ホッパーくん」と石井サチョーに呼ばれていくと、ホチキス止めされたA4の紙を手渡された。それは前日のミーティングで見かけたHonda Pit契約者に配られるPitの場所を解説したレポートだった。簡単な地図と、言葉による道案内が書かれている。記述は当然英語なので「はいよ~」とそのままコッツにトス。俺はこの時もっとPitの場所について突っ込んで聞かなかったことを一時間後に後悔することになる。

■RM103、ヌエボ・ジャンクションへ

次のサポートポイントであるヌエボ・ジャンクションはRM103あたりのコースサイドに設けられている。これまでのオーホスネグロスやKm78のように3号線沿いにあるのではなく、ダートロードを左に入って行った先にあるという話だった。白ピックアップ号に続いて3号線を進み、おそらくこの辺から入っていくんだろうな~というあたりで無線のやりとりなどから俺はある事実を知る。それはサポートカー2台の中に誰ひとりとしてヌエボ・ジャンクションに行ったことのある人間がいない、という事実だった。しかも、ヌエボまでの道のりが書かれた紙は俺の車にしかない。「前の車についていきます~」とおまかせでいる場合ではない。あの紙を渡された時点で俺がサポートチームの先導役だったのだ。すっかりお客様気分でいた俺のミスだ。

助手席のコッツも状況が飲み込めたようで急にレポート用紙に目を走らせ始める(英語が得意なのもコッツだけだった)。案内は図のないコマ図みたいなもので、マイル数と状況が文字で書かれたものだった。俺はトリップメーターをリセットし、コッツの指示を聞きながら車を走らせる。前にも一度コマ図通りに走ったことはある。簡単簡単。……しかし、その簡単なはずのことができなかった。街中であれば「2つ目の信号を右、さらに突き当たりを左」と簡潔な案内になるだろうが、ここは牧場の中だ。「follow the fence……だから柵沿いに行けってことじゃん?」「いやでも明らかにこっちの方が道がいいぜ」「でも柵からは離れていくし……」「そうか、じゃあ柵沿いに行こう。(無線)すいません、またUターンします!」とちょっとしたことに引っかかりまくった(後から分かったのだがどっちに行っても結果は一緒だった)。

不安になりながらも「右の柵が消えてしばらく行くと柵が左右両方に……出てきた出てきた! あってるあってる」と道案内と表示マイル数を信じて進んでいく。「キャトルガード(牧場のゲート)も出てきた、そしたらここから1マイル先に……」「先に?」コッツが前を凝視して「おかしい」という顔をしている。目の前からは道が消え、細いワダチが数本だけ残るふかふかの牧草地が広がっていた。俺は無線機に向かって「道っぽくないですが……とりあえず行ってみましょう!」と叫ぶと全開で牧場を突っ走りはじめた。「ヒャッホー!」不安をまぎらすように楽しんでみるものの長くは続かず、アッと言う間に道はいきどまりとなった。何度目かのUターン。白ピックアップ号には女性もいれば小さな子供もいる。あんまりガタガタ道にさらすわけにはいかないんじゃないか。俺は内心焦っていた。

■迷える2台のピックアップ

トリップBをリセットして恐らく間違ったと思われるポイントまでのマイル数を計算し、足し算しながら別の道を進んでいく。どうやら今度こそ合ってるようだ。さぁ次は? 「Bear left……ってどういう意味だろう……」「熊? 熊の置物でも出てくんのかな?」「(無視して)うーん、Bearは"広がり"みたいなニュアンスで使うこともあるから広場とかそういうことかな……」実はこのBearという表現、後日セヌーさんに聞いたところ、こういった道案内くらいでしか使わない言い回しで"Heading to~(~に向かって)"と同じような意味だった。曲がり角がないような地形でどっちへ進むか指示する時に登場するらしい。コッツが知らないのも無理はない。結局、このBear登場あたりからお互い確信が持てず、なんとなく道なりに進んでいくとY字路にぶつかった。

「さぁどっちだ……」マイル数は計算していたが、すでにどこまで正しく進んでいるかも分からず、道案内に"Y字を"という表現もない今、どっちへ行けばいいのかはほとんどヤマカンの世界だった。白ピックアップ号用に石井サチョーが積んでいたハンディGPSと地図を見比べてみると、方向的には左のようだったのでそちらへ進む。すると、またしてもキャトルガードが現れた。「もしこれがこの道案内に出てくる最後の方のキャトルガードだとしたら、抜けて直進1.1マイルでヌエボ・ジャンクションのはず!」「よし」かなり道が悪い中を1.1マイルほど進むと、道沿いがちょっとした広場になった場所に出た。「ここ……なのか?」

車から降りてみるが、他にサポートカーもいなけりゃ目印らしいものは何もなかった。もうちょっと先なのか? と思った矢先、道の先から派手なエキゾーストノートが聞こえてきた。現れたのは4人乗りのプリラン用バギーだった。砂漠の盗賊のように顔を布で覆ったパッセンジャーたちが親指を立て、俺たちがやってきた方向へ走り去っていく。どうしていいか分からずボーッとしていると、今度はKTMが2台通り過ぎた。何かがおかしい。もしここがコース上なのだとしたら、俺たちはコースを逆送してサポート地点に来たことになる。そんなハズはない。白ピックアップ号と相談する。もしかしたらみんなが通過するかも知れない、ということで白ピックアップはそこに残し、俺とコッツで別な道を探索に戻ることにした。

■ホッパー&コッツの初プリラン

なんらかのランドマークに頼るしかない俺たちは、先ほど出現したキャトルガードまでは合っていると想定してみた。真っ直ぐ1.1マイルとあるが、出てすぐをフェンス沿いに走る道のことかも知れないとそちらへハンドルを切る。しかし、走り出してすぐにまともな道ではないことが分かる。もの凄いウオッシュアウトだらけで、うまくラインを選ばないと腹の下を摺るような悪路だった。「こ、これは違うな……」と言いつつ、Uターンできるようなポイントがないためどんどん奥へと進まざるを得ない。ちょっとしたステアやロックとサンドに分かれる二股のルートを走っているうちに嫌な予感が確信に変わりつつあった。となりでは助手席の上にあぐらをかいていたコッツが時折空中に跳ね上げられては「解脱!」などと叫んでいる。その時、コースサイドに立てられた鮮やかな看板が目に飛び込んできた。

"RM101"

「うわー! やっぱりここはコース上だ!!」 俺のBAJA初プリランは4輪体験になってしまった。しかもUターンできるところはない。しかし、ここがRM101ならやはりさっきの場所は間違いということになる。そして、もう2マイルほど先へ進めばヌエボが出てくるはずだ。トリップをリセットしてさらにすごい道を2マイルほど進むと、コースサイドがかなり開けた場所に出た。ハンディGPSでもこのあたりがRM103であることが確認できたのでコースサイドへ車を入れる。その直後……もの凄い轟音とともにやってきたトロフィートラックがフロントサスが延びきるくらいリヤにトラクションをかけたまま全開で通過していった。ふたりの顔が青ざめる。あんなのにコース上で追いつかれていたら……。

無線で白ピックアップ号を呼び出すと通じたが、やはりプリランメンバーは来てないとのことだった。そこへプリラン中のKTMライダーが来たので手を振って止める。KTMライダーだし分からないだろうなと思いつつRM103はどこ? HondaPitは? と英語でコッツが質問する。するとRM103はこのあたりのはずだよ、という答え。さぁどうする。確かにここは場所も広いしいかにもサポートポイントに適しているように見える。が、この広場から外へ出る道が見当たらない。じゃあもう少し先へ行くか? しかし、ヌエボジャンクションの先はサミットが待っている。もし、この車でサミットに突入することになったらと思うと、とても先へ行く気にはなれなかった。あのキャトルガードも間違いだったんだ、もっと戻って別なルートを探そうと決めた。無線で白ピックアップ号と連絡を取りつつ、クラクション鳴らしっぱなしでコースを逆走する。正直生きた心地がしなかったが、なんとかキャトルガードの場所まで戻ることができた。

■ヌエボ・ジャンクション発見!

隣で荷物と一緒に飛び跳ねるコッツの罵声を無視し、来た道を急いで戻る(ちなみに今回の体験以来コッツは車酔いをしなくなったそうだw)。さっきのY字路だ。考えられるのはもうここしかない。GPSによればまったくの逆方向ではあったが、道は曲がりくねっている。きっと最終的にたどり着くはずだ。祈るような気持ちで右方向へかっ飛ばしていくとキャトルガードが出現し、その先1.1マイルほどでコースサイドの広場にたどり着いた。「あった!」さっき見たコースサイドの広場と似ているが、違う場所だった。他のチームのサポートカーもたくさんいる(後からわかるのだが、先ほどの無人の広場から数百メートル行けばヌエボだった)。すぐにセヌーさんたちを探すが見当たらない。俺たちが迷った時間から考えると、まだ到着してないなんてことはありえないはずだ。

コッツが車から飛び降り、近くにいたサポートの連中に「502xを見なかったか!?」とかたっぱしから声をかける。が、見たという者はいなかった。どのチームもそんなに長くサポート地点に滞在しているわけではないのだ。無線で白ピックアップ号を呼び出すが、今度は距離のせいか応答がない。会えるとしたら必ずここのはず。離れたくなかったが必死で無線に話しかけながら来た道を戻り、白ピックアップ号と連絡がついたところで呼び戻し、引き連れてヌエボ・ジャンクションへと再度ぶっ飛ばした。白黒2台のピックアップがヌエボに到着してから、唐沢さんのバイクが俺たちの来た道を通ってやってくるまで5分とかからなかった。聞けば4人は国道付近まで俺たちを探しに出てくれており、たまたま唐沢さんが単独で見にきてくれたところだったのだ。俺たちの到着がもう少し遅れていたら、出会えるのはさらに先になっていただろう。

結局3時間近くもロスし、ようやく全員合流。本来はここヌエボで昼食を食べる予定だったが、ムラカミさんとナカムラさんの交替のみですぐにライダーをサミット方面へ送り出す。次のサポートポイントはサミットを越え、ドライレイクを抜けた先のRM160ラグナ・サラダ。俺たちは国道3号線へ出ると、5号線との分岐に向け車を走らせた。(つづく