■BAJA CHICKEN 第28羽 「05/29 右腕のリストバンド」

■備えあれば無礼者そこになおれ
腹いっぱい食べてぐっすり眠ったおかげで寝起きはスッキリ。左腕の調子も悪くない。さっそく昨日の晩にセヌーさんに言われた通り保険会社に国際電話をしてみると、現地のコーディネーターを紹介してもらえた。コーディネーターに連絡すると、ちょうどエンセナダ在住の日本人通訳がいるから、すぐに車で迎えに行き、病院まで同行させるという。超迅速な対応。備えあれば嬉しいな。保険って入っておくもんだね。

10時には着くというから慌ててホテルの近所のメキ飯屋へ。戻った時にはもう通訳さんが到着していた。セヌーさんはピックアップとバイクを洗車屋さんに持って行っておいてくれるということで、コッツとふたりで通訳さんの車に乗り込む。向かったのはホテルから10分ほどの場所にあるVELMAR病院。到着すると、とりあえず救急扱いでの診療となった。ちょっぴりセクシーなおじさんのお医者さんとまずはシェイクハンドから。どこが痛いとか、どうすると痛いなんて質問をされる。海外の病院は初めてなのでちょっぴり緊張……。でもやることはほとんど変わらなかった。

なんにしてもまずはレントゲンだね、ってことでレントゲン室に行くと可愛い女性技師さんが! チラッと見ると、ニッキー・ヘイデンのポスターが壁に貼ってあった。バイク好きなのかな……。すると、案の定俺のBAJA500シャツを見て「日本からBAJA500を見に来たんですか?」ときた。さすがに「出る」って言ったら面倒なことになりそうな予感がしたので「うん、お手伝いだけどね」と答えておく。すると、「そうなの! 私レース大好きで明日も病院休んで1日受付・車検の手伝いに行くんだ!」だって。ヤバすw。会ったらどうしよ……。無駄な嘘をつくからこういうことになる。
■こんなん出ました
診察室に戻ってしばらく待っていると、先生がレントゲン写真を持ってやってきた。なぜか表情が暗い。なになに、何が写ってるのかなー、と見てみると……。

( ゚д゚) ……。あー、ひとり前の患者さんの写真を見せちゃったんですよね、わかります。「左前腕部を構成する2本の骨のうち、太い方(とう骨)が折れてますね」。……マジで!? 思ったよりも豪快にイッてんじゃん。日頃から「病気に弱く、怪我に強い」を標榜している俺ではあるが、こんなんなっててなんでこの程度の痛みで済んでるのか不思議だ。もしかして痛感が鈍いのか? それともやっぱりすぴりちゅある!?

先生が「とりあえず外科手術が必要だけどどうする?」と言うので当然キャンセル。すると、応急処置ということで挟み込む形の簡易キャスト(ギプスのこと)を付けてくれた。しかし、開放骨折してなくて良かった。もし開放してたら走って帰るなんて出来なかっただろうし、救出されたとしてもそのままサンディエゴに戻って緊急入院→セヌーさんもレース参戦不可能、ってコースだったはず。急に怪我人みたいになった俺はレントゲン写真をもらい、痛み止め&胃薬を処方してもらってからホテルへ戻った(しめて3万円くらいだったかな?)。

■恥ずかしながら帰って参りました
ホテルに戻ると、ちょうどみんな駐車場でGPSの装着やら何やらマシンのセットアップをしているところだった。俺の「ただいま帰りましたー」という声に振り返り、キャストを見て視線が固まる。「え?」「やっちゃってました……」「剥離?」「いや、もうちょっと……」「どれ(写真見る)……うわ……」。たぶん、もっと症状が軽いと思ってくれていた分、かえって引かせてしまった気がする。申し訳ない気持ち……。とはいえ、BAJAではトラブルがあるのが当たり前だろ、という古強者ばかりなので余計な心配も無用。なんとか走らせてあげたい、と気を使わせてしまうよりはずっといいと思った。



セヌーさんはさすがに近くにいたせいか、ある程度予想はしていたようで「やっぱいってたか……」という反応。「で、どうする?」というので「もちろん走りますよ」と即答しておいた。普通に見えてた時は「いだぐで乗れない…」とか言ってたのが、怪我人風になった途端に強気な発言をし出すもんだから、どこまで本気なのか分かりかねるといった表情で苦笑のセヌーさん。「いやホント大丈夫だから!」「はいはい」。見ればコッツも無理だべ、って顔をしている。いや本当に大丈夫そうなんだってば! 今日明日ってのは無理でも少なくともあと2日寝れば走れるくらいに回復しそうな感触があった。「得意の根拠レス?」と言うセヌーさんに「いや、たぶんBAJAの精霊がすぴるちゅあるぱぅわーで……」と言いかけたがやめておいた。余計にややこしいことになるのは目に見えている。

■可哀想な子犬ちゃん
その日、午後1時からのライダー受付にみんなで出発。本来の受付・車検は明日なのだが、Express Racer Registrationで1日早く受付だけ済ますことができるのだ。会場はスタート近くのホテルだった。オフィシャルTシャツやらステッカーの販売ブースもあり賑わっている。

さっそくセヌーさんとおばちゃんたちが働く受付テーブルへ。事前に送られてきたメンバーカードを見せると、おばちゃんが左手首に名前とゼッケンの書かれたリストバンドをはめてくれる。これ以降はこのリストバンドだけがBAJAライダーである唯一の証となるのだ。セヌーさんの横が空いたのでメンバーカードを見せると、担当のおばちゃんがキャストを見て何か言い始めた。

おばちゃんA 「……あらやだこのコ、左腕にキャストしてるわ!」
おばちゃんB 「どうしたの?」
おばちゃんA 「左腕にリストバンドが巻けないのよ」
おばちゃんB 「いいじゃない右手に巻けば。片手あれば運転できるわよ、ねぇ?」
ホッパー 「??」
おばちゃんA 「このコ、バイクなのよ!」
おばちゃんB 「げえええええ! マジか!!」
ホッパー 「僕がスタートライダーです(唐突に)」
おばちゃんA 「あなた英語分かる? (セヌーさんに)あなた、このコにSick puppy...(可哀想な子犬ちゃん…)、って言ってあげて」
セヌー&コッツ 「ゲラゲラゲラ!」
ホッパー 「????」
▲右端は岡本太郎作「太陽の塔」の真似をするセヌーさん。
無事ライダーエントリーも終わり、記念のTシャツとステッカーをもらう。日本に帰ったら車に貼ろうっと。さらにオフィシャルTシャツを物色していると、モトクロスウエアを来た長身のライダーが歩いてきた。JCR(ジョニー・キャンベル・レーシング)1xのライダー、ロビー・ベルだ! 遠くから見ると細いけど、近くで見ると全体的にデカい。パストラーナってこんな感じなのかな、とかまったく関係ないことを考えつつ一緒に記念写真を撮ってもらった(ブレブレ)。

■デカール関係貼りまくり
ホテルに戻ってからバイクの外装と、チェイスカーTUNDRAへのデカール貼りを進める。バイクの方はマッドフィッシュの今村さんデザイン。ドライヤーを使わなくても貼りやすい素材で助かりまくる。チェイスカーの方はセヌーさんが作ってきたデカールをみんなであーだこーだといいながら貼る場所を決めていくのが楽しい。俺はデカいの貼るには手が不自由なので「あー、ちょっと右下がってんなー」とか偉そうに指示出しする役なので超楽w。残りは明日の午前中ね、ってことで作業は終了。仕上がりが楽しみだ。

俺は部屋でウラン・マーキング・デザインさんに作ってもらったリアット・ブレイス用デカールも貼りこみ。こちらも常温で貼れる素材で楽チン。全部貼って組み上げてみたら、急にレーシーな雰囲気になった。その後、3人で車で出かけて街のタコス屋へ。適当に入ったお店だったけど、どれもウマイ! 今回の旅で一番美味しいと感じたタコスだった。元気のいいお兄ちゃんの「ウノマス?(もういっちょ行く~?)」に乗らされて、ボリュームのあるタコスを何が出てくるかも分からずに注文しまくる。


食ってると、突然お店に流しのおじさんが歌いながら入ってきた。ところがこの人、歌も調子っぱずれならギターのチューニングも狂いまくってる。そのくせ気持ち良さそうに歌い上げていくもんだから、危うく噴出しそうになってタコスを無理やり喉に押し込む。隣を見るとコッツが明らかにウケまくっていてヒヤヒヤした。お店の人たちはそれまで楽しそうに話していたのに、おじさんが歌っている間はなんか沈痛な感じで通り過ぎる嵐を待ってるかのように見えた。観光協会とかからのお達しで追い出せなかったりするんだろうか。


おなかもいっぱいになったのでホテルに戻って就寝。いよいよ明日はレース前日の車検日。エンセナダの街もお祭り騒ぎになるというから楽しみだ。ベッドに寝っころがって、左手のキャストと右手のリストバンドを見る。ヤバイ、理由は分かんないけどなんかすげぇ面白くなってきた。(つづく)