■BAJA CHICKEN 第29羽 「05/30 エンセナダ、熱狂の日」



■バイク&チェイスカーもお色直し完了
車検日の朝、部屋の外から聞こえてくる声で目が覚めた。起き出して行くと、石井サチョー&唐沢さんチーム、ナカムラさん&ムラカミさんチームがマシンを交えて記念撮影の真っ最中。みんな早いな~。と感心している場合ではなく、バハチキチームも残りのバイク&チェイスカー用グラフィックを貼り込む。完成した車両はとてもプライベートチームとは思えないルックスですっかりご満悦。あまりの決まり具合に恥ずかしくなってちょっと腰が引けているセヌーさんをよそに、BAJA初参戦マシンの完成が嬉しくてはしゃぎまくる俺&コッツ。こーゆーのは楽しんだもん勝ちなのだ。


▲シートのすぐ後ろにあるのはGPSとIRC用のアンテナ。
▲TUNDRAにもばっちりゼッケンを入れる。他チームから認識されやすいようにするのが基本だ。
▲このTシャツはTTPLにお願いして作った決勝日用のチームシャツ。背中にはでっかく257xと入っている。
■エンセナダは燃えているか
車検前に通りへ出かけてみると、すでに街はBAJA一色となっていた。街の中心部の道路が一部封鎖されていることもあり、普段よりも交通渋滞が凄い。レースマシンがトレーラーに載せられて道端に駐車してあるかと思えば、派手なエキゾーストノートを撒き散らしながらトロフィートラックが走っていたりと、まるで街全体がレース会場になったかのよう。ついに俺たちの「Dust to Glory」も始まるんだ……と思うといやがうえにも気分が盛り上がってくる。





▲祭りと言えば喧嘩! 興奮した地元の若い衆がPOLICIAのごやっかいに。
■メインストリートはお祭り騒ぎ
すでに始まっている車検の列に並ぶべく、まずはセヌーさんがホテルを出発。俺とコッツはヘルメット(チェックシールを貼ってもらう)とカメラを持って徒歩でセヌーさんを追いかける。車検会場に続くメインストリートに近づくと、まるで縁日のように出店がひしめき合っていた。人出もかなりのもので、「すいませーん(←日本語)」と声をかけながらかき分けていかないとまったく前に進めないことも。バイクは優先で車検を受けられるので、セヌーさんはずらーっと並ぶ4輪勢の列をどんどん追い越していく。





▲お菓子やアイスをたっぷり載せたネコぐるまみたいのがたくさんいた。
▲メキシコと言えばやっぱりルチャリブレ! マスク買ってくりゃ良かった。
メインストリートにできるこの車検待ちの列は、言ってみればBAJA500パレードなのだ。ヒーローであるドライバーや子供たちをボンネットに載せ、数人がかりでマシンを押していく(本物のチームスタッフなのか好きで押してる地元のメキやんなのかはイマイチ判別がつかない)。カメラを向けて声をかけるとみんな最高の笑顔でこたえてくれるし、観客たちもおかまいなしにメキ語で話しかけてくる。集まってるのはレース好きばかり。言葉わっかんねぇよ、と思いつつなぜか話が通じていたのはバハマジックなのか。
▲生意気盛りな未来のBAJAレーサーたち。

▲レースクイーンも日本のそれとはひと味違います。目ぢから系。

▲XR50 BAJA Racer!? この直後、ウイリーしてまくれそうになってたw。

▲トロフィートラッククラスに参戦するRon Whitton。そら惚れるわ……。

▲ドリカム構成な3人組。そのまま出ちゃえば!

▲お姉さんも、ちょっと一休み。

▲こんなちっこいマシンで走りきれるんだろうか……。


▲「もうこれが最後の1枚だよ~」「いいからはよ投げろ~!」


▲高価なBAJAレーサーも子供にかかると単なる遊び場だ。




▲出た! サル・フィッシュ!
ド派手なトロフィートラックやバギーもカッコいいんだけど、さすが空冷ビートルの本場メキシコだけあってフォルクスワーゲンベースのマシンたちに心ときめく。なんでも地元でVolkswagenはBicho(虫のメキ語)をかけあわせてVOCHO(ボチョ)と呼ばれているんだとか。いいね、ボチョ。いつかソンブレロかぶってClass11(VWノーマルクラス)で出てみたい。しかし、こんなのがどうやってバフバフのサンド路面とかガレ場の登りを通りぬけてくるのかまったく想像がつかない……。

▲「Dust to Groly」でもおなじみ、Class11に出場する1101ソロザノのマシン。



列の先頭までたどり着くと車検場の門の前にセキュリティが立っている。FRMのミカミさんからも聞いてたけど、ここ数年で車検場への出入りが相当厳しくなっているとか。どうしようかなー、と遠巻きに見ていたらフォレストのM林さんが偶然通りがかって「He is Rider!!」と俺を中に投げ込んでくれた(あざーす!)。係りの人にヘルメットを見せると、結構入念に調べた上でチェックが通った証であるステッカーを貼ってくれる。マシンのチェックもOKということでセヌーさんはバイクでひと足先にホテルへ。俺とコッツはまた写真を撮りながらメインストリートを戻っていった。
■3人目のBAJA CHICKEN発見?

帰りがけにホンダワークスJCR(ジョニー・キャンベル・レーシング)のテントを覗いてみたらデビル花輪さんがお仕事中。あとで知ったんだけど、JCRチームは車検の締め切り時間ギリギリに持ち込むんだとか(何でだろ)。マイヒーロー、ジョニー・キャンベルは近くにいなかったみたい。残念。ジョニ男にはすげー良く会うんだけどなぁ。しょうがなく置いてあった1xロビー・ベル車を「お~これが常勝チームのマシンかーええなーええなープレシジョンコンセプツのサスもカッコええなー」と見とれていると、どっかで見たようなステッカーが……。

ちょwww、花輪さん(←ステッカー渡してた)大丈夫なんですかそのイタズラw。もちろんレース前には剥がしたんだろうだけど、ジョニー・キャンベルには何故かウケてたそうで。ステッカー作っていってみるもんだね。本懐を遂げた気持ち。
■レースガス購入&Mag7受付
ホテルに戻り、今度は車でMag7の受付とレースガスを買うために出かける。ステッカーチューンされたTUNDRAでMag7を探しながら街中を走ると周囲の視線が刺さりまくりでちょっと恥ずかしい。全然Mag7が見つからないので、まずはSunocoでオクタン価100のレースガスを購入。Sunocoのおじさんに「で、お前らのチームのテリヤキ屋台はどこにあるんだ?」と超天然なボケを食らいつつMag7の場所を聞いてみると、「隣だよ」とのお返事。ラッキー! ていうかMag7目立たねえええEEE! これじゃわからん。BAJA PITみたいにもうちょっとデカい看板とか立てようよ……。

▲この時まさか日本でレギュラー170円突破してるとは知る由もなく。
▲こんなのもガス補給にやってくる。
Mag7では好きモンのおじさん&おじいちゃんたちがPITの配置について説明してくれる(結局かなりマイル数はアバウトだったけど…)。最初は「もうないよ」って言われたMag7Tシャツも、後から「あった」とかなんとかでゲット! うーん、このユルい感じがMag7のノリなのか……。結構キチンとオーガナイズされたサービスを期待する方はBAJA PITをオススメします。ロゴが可愛いからって選ぶとこういう目に遭う模様(←セヌーさんに散々嫌味言われたw)。
▲非常に分かりにくいMag7のトラック。だがそれがいい。


■GPSユニット装着完了
最後の仕上げはIRC製GPSユニットの装着、ってことでセヌーさんがピックアップしてきた弁当箱みたいな機械をエンジン左側に装着する。日本国内であーだこーだと頑張ったおかげでかなり丈夫なブラケットもできていたし、寸法もバッチリ。DIYにしてはかなりちゃんとしたモノに仕上がったと思う(←何もやってないクセに偉そう)。いやーセヌーさんお疲れした! これで次からは楽できるね。IRCがGPSユニットの寸法を勝手気ままに変えたりしないことを祈る。



■メキシコで飲むコーラがウマいワケ
受付・車検関係をすべて終え、一息つこうとホテルとなりのタコス屋でコーラ&シーフードスープ。スープはちょっと酸味があって疲れた体に染み入るウマさ。日本でも食いたいわこの味。そしてやっぱりコーラがさいこう! 日本に帰ってきてから聞いたんだけど、メキシコ産コーラが美味いのには理由があった。メキシコ産以外のコーラの甘味料は安いコーン・シロップなんだけど、メキシコ産だけはオリジナルレシピであるSugar Cane(サトウキビ)を使ってるんだとか! 実際に値段もアメリカ産のものより高いそうな。ビンが緑がかってるのが目印。メキシコ行くことがあったらぜひ試して欲しいもんです。日本でも買えないかなぁ……。詳しくはコチラ。



▲とはいえ3リッターはどうかと思うぞ。
■ライダーズミーティングは厳かに
夕方、サチョーの運転するパッセンジャーバンに乗って街の中心部にある教会へ。ここでライダーズミーティングが行われるのだ。俺たちが到着すると会はすでに進行しており、メキシコ国歌が斉唱されているところだった。さらにメキシコの軍歌(?)が披露された後、サル・フィッシュやエンセナダのお偉いさんからのお話が続く。会は厳かに粛々と進められていく。参加者たちはみな静かに話を聞いていた。BAJAは荒くれ者たちのレースじゃない。大自然に挑戦する勇気と謙虚さ、自分とマシンをコントロールするインテリジェンス、そして優しさとタフネスを持ち合わせる者だけがBAJAのスタートラインに立てるのだ。俺にその資格はあるか……? 居並ぶ漢たちの横顔を眺めながら、正直全然足りてないなーと思った。だから、今はこの輪の中に入れただけで幸せだ。何事にも最初がある。

▲教会内にはセキュリティとして兵士が配置されていた。こういうところは大事にするらしい。
▲「信じる気持ち」Tシャツを着てライダーズミーティングに臨むジョニ男。

▲ミーティングを終えてすっかり呆けている俺&セヌーさん。
■レース前夜
レース前最後の夕食は全員で日本食レストランへ。ダシの効いてないミソスープも美味しく感じた。宿に戻ってからはセヌーさんと走行パートの打ち合わせだけして早めに部屋に戻る。明日は何時間起きてることになるか分からないから早めに眠るのだ(クラス優勝を狙うサチョーチームやムラムラ組は睡眠導入剤を使うこともあるというからその本気度はMAXだ)。スタートライダーはやはり俺が担当する。サチョーに借りたTLDのベガス(実はマイクスに自分のモトパンを忘れた…)とプロテクターをひとつひとつ確認しながら床に並べていく。さらにELMOから借りたSUV-Camのセッティングを確認。うまくいけばBAJAのオンボード映像が撮れるはずだ。
▲生モノは当たるとヤバいから食うな、って言われてるのについ頼んでしまう。
▲SUV-Camのセッティングもバッチリ。ちゃんと写りますように……。
▲朝起きてすぐに用意できるように床に頭からつま先まで装備を並べる。
すべての準備が終わり、キャストを腕から外してベッドに入る。普通に動かす分にはまったく痛みはない。横たわるとシーツがひんやりとしていて気持ちが良かった。ホテルの駐車場でガンガンにヒップホップを鳴らしているATVチームの連中をセヌーさんが一喝する声が聞こえる。俺はこのBAJA CHICKEN連載を始めた頃、そしてもっと昔、高校の同級生ポンキチと「BAJAっていいよなー」と言い合っていた頃のことに思いを巡らせていた。ずっと遠いと思っていた世界が目の前にあり、もうあと数時間後にはBAJAのスタート台に立つ。実感が湧かない分緊張もなく、眠りにつくまで長くはかからなかった。(つづく)